I(総論) §2 行動総論

 4 現場活動 

(1)水利部署
留意事項 事故事例等
① 水利誘導時

1 水利へ車両を誘導するときは、水利の位置及び停車位置を明確に示すとともに、ホース等の障害物を排除して行う。

▶ 車両の誘導時、路上に延長されていたホースにつまずき、足首を捻挫した。

2 車両誘導は、機関員から視認できる位置で行う。

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② 吸管操作時

1 吸管を伸長するときは、吸管のねじれによる跳ね返りに注意する。

2 吸管を伸長するときは、車両の吸管止め金具で指をはさまないよう注意する。

3 吸管及び吸管ロープにつまずかないよう注意するとともに、通行人や他の隊員との接触に注意する。

▶ 吸管ロープにつまずき転倒し、ひじを負傷した。

4 特に夜間、消火栓及び防火水槽に部署し、蓋を開放するときは、つまずかないよう注意するとともに、防火水槽等への転落を防止する。

▶ 夜間、防火水槽へ吸管を投入する時、その蓋につまずき転倒し、ひざを打撲した。

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③ 消火栓使用時

1 消火栓の蓋を開けるときは、安定した姿勢で行い、消火栓鍵を挿入して急激に持ち上げないようにする。

▶ 消火栓の蓋を開ける時、無理な姿勢で開けたため、腰椎を負傷した。

2 消火栓の蓋は、転落防止のため吸管伸長後に開け、それを移動するときは、障害とならない位置に置く。

3 消火栓の蓋を開けるときは、手足をはさまれないよう注意する。

▶ 消火栓の蓋を路上に置くとき、2人の動作のタイミングが合わずに、隊員1名の指が、蓋と地面の間に挟まれ負傷した。

4 消火栓のスピンドルを開放するときは、急激に水が噴き出す場合があるので、徐々に回す。

5 スタンドパイプを使用する際は、スピンドルを開放する前に、吐水口に結合していることを十分に確認する。

▶ スタンドパイプが結合していなかったため、水圧でスタンドパイプが飛んで、頭部を負傷した。

6 消火栓の蓋は、はずみで閉じる場合があるので、スピンドルドライバーは、吸管を離脱するまで抜かないようにする。

7 吸管結合後は、ロープ展張、注意標識板の掲示、照明器具等により転落防止措置をとる。

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④ 防火水槽使用時

1 防火水槽の蓋の取手が腐触等により損傷している場合があるので注意する。

2 防火水槽の蓋は2名以上で呼吸を合わせ、腰を十分に落として持ち上げ、水平に移動させ安全な位置におく。

▶ 防火水槽の蓋を1人で持ち上げようとしたため、腰椎を負傷した。

3 防火水槽の蓋を持ち上げるとき、または降ろすときは、手足をはさまれないよう注意する。

▶ 防火水槽の蓋を降ろす時、足の指をはさまれ負傷した。

4 吸管投入後は、ロープ展張、注意標識板の掲示、照明器具等により防火水槽への転落防止措置をとる。

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⑤ 河川等自然水利使用時

1 柵越しに吸管を投入するときは、はしご等を活用し、不安定な踏み台を利用しないようにする。

2 河川に吸管を投入するときは、流水の速さと深さに注意し、必要以上に河川に足を踏み入れないようにする。

▶ 河川に吸管を投入し、水の中でストレーナ部を固定中、河川の深み部分に落ちた。

3 転落のおそれのある河川等に吸管を投入するときは、支持物に身体を固定するか確保を受ける等転落防止措置を講じる。

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⑥ 交通頻繁な道路上に水利部署時

1 交通頻繁な道路上に水利部署するときは、進行方向に向かって、車両と路肩間に水利が位置するよう停車し、反対車線での作業は控える。

▶ センターライン寄りの消火栓に水利部署し、反対車線側で吸水活動をしていて、機関員が通行車両に接触し腰部を負傷した。

2 交通監視員を配置し、反射チョッキなどを着用し、誘導灯や警笛を使用して交通の監視を行う。

3 昼間であっても、できるだけ前照灯や作業灯を点灯し、一般車両に注意を喚起する。

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⑦ 夜間の水利部署時

前照灯、作業灯、携帯用照明器具を有効に活用して明るく照らし、周囲の状況や足元を確認し行動する。

▶ 夜間、消火栓から吸水準備中、誤ってくぼみに足を突っ込み、転倒負傷した。

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(2)ホース延長
留意事項 事故事例等
① ホースカー使用時

1 ホースカーを車両から降ろすときは、2人以上で後方と足元に注意し、確認呼唱を行い、ホースカーを確実に保持して降ろす。

▶ ホースカーを1人で降ろそうとしたため、ホースカーを支え切れず、えん木と壁体の間に身体をはさまれ、腰部を負傷した。

2 ホースカーを降ろすときは、降下場所周囲の状況を確認し、止め金具や車輪で指をはさまないよう注意するとともに、レール等から脱輪させないよう注意する。

▶ ホースカーを降ろす時、レールから脱輪し、その反動によりホースカーの車体で腕を打撲した。

3 油圧装置(パワーゲート機構)がついている車両は、テールゲート(リフター)が完全に降りた状態でホースカーを降ろすとともに、テールゲート(リフター)で手足をはさまれないよう注意する。

▶ 機関員が油圧装置を操作し、ホースカーの載っているテールゲートが降りてきたが、火災にのみ気をとられ、ゲートと路面との間に足をはさまれ負傷した。

4 ホースカーを降ろしたのちは、レール等を速やかに収納し、活動の支障とならないようにする。

5 ホース延長時は急激に走らず、周囲の状況をよく見て延長する。

▶ 火災現場へ到着し、ホースを延長中に左アキレス腱を負傷した。

6 ホースカーによるホース延長は、前方、左右、足元に注意するとともに、見通しが悪い場所や道路を横断するときは、常に安全を確認し、いつでも止まることができる態勢で行う。

▶ ホースカーを引いていた隊員が、道路の曲り角で急に飛び出してきた自転車に衝突し、足を打撲した。

7 ホースカーの後方の操作員は、資機材の転落防止を図るとともに、延長ホース、結合金具及び道路の段差等に足をとられ、転倒しないよう注意する。

▶ ホースカーでホース延長中、後方の操作員がホースカーから落下した結合金具につまずき、転倒し負傷した。

8 ホースカーは、活動の支障にならない場所に停車させ、傾斜地に停車させるときは、車輪止めをする。

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② 手びろめ及びホースバッグによるホース延長

1 ホースは、無理な本数の搬送は行わず、必ずホースの結合金具または金具近くを確実に保持し、周囲や前方の障害に注意して延長する。

▶ 手びろめでホースを搬送する時、ホース金具を確実に保持しなかったため、金具で胸を打ち負傷した。

▶ 手びろめによりホースを延長中、延びていたホースの分岐管につまずき、足首を捻挫した。

2 ホースバッグによるホース延長の際は、肩に確実に担ぎ、周囲や前方の障害に注意するとともに、転倒防止に注意する。

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③ 路地等での延長

1 ホースを延長するときは、側方の張り出し物に注意するとともに、架ていされているはしご等に引っかけないようにする。

▶ 路地で手びろめによりホースを延長中、張り出し物に激突して顔面を負傷した。

2 ホースは道路の片側に寄せて延長し、伝令等の走行路を確保する。

3 ホースの屈曲、もつれ等に注意する。

4 狭あいな道路、交差点などでホースを延長するときは、通行人や車両等との接触に注意する。

5 ホースは必ず広い場所で延長してから、路地等へ引き込むようにする。

6 予備ホースや空のホースバッグ等は、活動の支障とならない場所に置く。

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④ 屋内での延長

1 ホースは原則として屋外で延長して屋内に引き込み、屋内では家具等に引っかけて引き倒さないよう注意する。

2 ホースを延長するときは、足元を確認するとともに落下物等に注意する。

▶ ホースを上階へ搬送中、階段で足をすべらせ、ひざを負傷した。

3 階段でのホース延長は、手前で延長後上階に引き上げるか、上階から下階に延長するよう配慮する。

4 階段で上階から下階へホースを延長するときは、下階の隊員の有無を確認する。

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⑤ 崖、斜面等での足場の悪い場所での延長

1 ホースは、はしごや防水シート、厚板等で足場を補強してから延長する。

2 ホースを延長するときは、命綱等により身体を確保して行う。

3 ホースを搬送するときは、足元を確認してつまずきや転倒防止を図る。

▶ 手びろめにより山の斜面を延長中、足をすべらせ転落し、頭部を打撲した。

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⑥ 屋根等高所での延長

1 ロープでホースを吊り上げて延長するときは、ロープの結着を確実に行うとともに、途中階の窓ガラス等にあたらないよう上下の隊員間で合図を十分に行う。

▶ ホースを吊り上げ中、途中階の窓ガラスにホースの金具があたり、その破片で地上で作業していた隊員が手に切創を負った。

2 ホース延長は、転落防止のため命綱等で身体を確保して行い、地上の隊員は真下で作業しない。

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⑦ 塀等を越える延長

1 塀等の強度を確認するとともに、塀が高いときには、はしごを使用する。

2 塀の手前で延長し、自らは身軽な状態で塀を乗り越えた後、ホースの金具を持って引き込む。

3 塀から降りるときは、足元を確認し、飛び降りることなく、手でいったんぶら下がってから着地する。

▶ ホース延長中、塀の上から直接飛び降りたため、足首を捻挫した。

4 埋込みガラス片や鉄針等の防犯施設のある塀は、乗り越えないようにする。なお、夜間は判別が難しいので十分注意する。

▶ 夜間、塀を乗り越えてホースを延長しようとして、塀に飛びついた時、防犯用の埋込みガラス片で手に切創を負った。

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⑧ 軌道や交通頻繁な道路での横断延長

1 ホース横断溝を使用して軌道を横断延長するときは、列車の接近を早期に発見するため、必ず上下線の両方向に監視員を配置する。

また、監視員は防火帽のしころを取る又はまくり上げて視界と音声等を確保するとともに、進行してくる列車を発見したときは、直ちに警笛等を使用し、活動中の隊員に注意喚起する。

2 軌道沿線の火災で、やむを得ず軌道上を横断または軌道敷内に進入してホースを延長するときは、鉄道関係者に列車の停止を要請し、列車の停止を確認してからホース延長を行うとともに、軌道関係者の立ち会いを求める。

3 軌道上は、線路、枕木、側溝の段差等により足場が悪いので、転倒したり、つまづいたりしないよう注意する。

4 交差点等交通量の多い道路を横断してホースを延長するときは、警察官の協力を求めるほか、監視員を配置し安全を確認してホース延長を行う。

なお、長時間通行止め等の措置ができない場合は、ホースブリッジを使用するとともに、監視員を配置する。

▶ 交差点でホースを延長中、右折してきたバイクに接触し、バイクのハンドルで腕を負傷した。

▶ 中継ホース上をトラックが高速で通過したため、ホースが跳ねあがった。そのホースに足を払われ転倒した。

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(3)放水活動
留意事項 事故事例等
① 送水活動時

1 機関員は、放水位置、ホース本数を確認して送水圧力に注意するとともに、送水中は常に計器類を監視する。

▶ てい上で放水活動中、急激に圧力が上昇したため、反動ではしごから転落し、腰部を打撲した。

2 ホースの跳ね上がりを防ぐため、放口コックはゆっくり開放する。

▶ ホースの延長中に送水したため、ホースの金具が跳ね上がり、あごを負傷した。

3 送水圧力の急激な上昇により、結合部が離脱することがあるため、送水圧力は徐々に上げる。

4 予備送水は目で確認できる位置まで行い、いつでも停水できる態勢を確保する。

5 ホースの曲折を直すときは、ホースの跳ね上がりに注意するとともに、曲折部に手をはさまれないよう注意する。

6 ホースと放水口や筒先との結合は確実に行い、結合状態を確認する。

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② 放水活動時

1 建物の燃焼状況、壁体等の受熱状況、焼損程度等を観察し、家屋、壁体の倒壊、屋根の落下、床の踏抜き等の危険を考慮し、活動隊員の安全確保を図れる場所を筒先部署位置として選定する。

2 筒先を背負うときや降ろすときは、周囲の安全を確認するとともに、自己の足元に落下させないよう注意する。

3 送水前であっても筒先は確実に保持する。また不意の送水があることを予測して、必要に応じてノズルは閉状態にしておくなどの措置をとる。やむを得ず、筒先を放して作業を行うときは、柱等の堅固な支持物にロープで結着するなど、通水時におけるホースの跳ね上がりを想定して、安全確保に努める。

4 筒先を保持するときは、放水による反動力に耐えられるように前傾姿勢をとる。

▷ 車両火災で出場中、現着し火点直近で放水しようとした時、高い圧力で水が来た為、その反動で筒先が顔面を直撃しそうになった。

5 放水中は、足元が濡れ滑りやすいので注意する。

6 筒先を移動する場合は、足元の状況、高所からの落下物等を確認して行う。

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③ 屋内進入時

1 屋内へ進入するときは、昼間でも照明器具を携行し、建物の壁体等のはく離落下に注意する。

▶ 火災現場で防ぎょ活動中、屋内進入して放水していたところ、部署位置上方の天井の梁部分が落下してきて、活動中の隊員の頭部及び右肩に当たり、右肩及び頚椎を捻挫した。

▶ 屋内への進入時、上方から落下してきた瓦で肩を負傷した。

2 フラッシュオーバー(※)の危険性がある場合は、開口部の急激な開放を避け、姿勢を低くし、送水されていることを確認してから進入する。

※ フラッシュオーバー 

局所的な火災によって熱せられた天井や煙層からの放射熱によって、局所火源そのもの、あるいはその他の可燃物が外部加熱を受け、それによって急速な延焼拡大が引き起こされ全面火災に至る現象。

▶ 建物火災に際し、人命検索中フラッシュオーバーが発生し、火炎に包まれ、全身熱傷により死亡した。

▶ 耐火構造の屋内へ進入した時、急に窓を開けたため、噴き出してきた火炎で顔面に火傷を負った。

▶ 工場火災に際し、屋内上層部から放水作業従事中、急激な延焼により退避できず、2名が熱傷等により亡くなった。

▶ 建物火災に出動し、建物2階で消火活動中、急激な燃焼の変化により窓際で意識を失った状態で発見、救出されたが、その後死亡が確認された。

3 延焼中の建物の上方や側方の落下危険物を、棒状注水等により排除してから進入する。

4 濃煙・熱気の噴き返しを避けるため、筒先の開放は徐々に行い、斜めから注水し安全を確認したのち、正面注水を行う。

5 呼吸器等を着装のうえ命綱等により退路を確保し、床等の強度を確認したのち進入する。また、床の中央部でなく、縁部を進むようにする。

▶ 呼吸器を着装しないで屋内に進入したため、煙に巻かれて一酸化炭素中毒になった。

6 排気側から放水は、吸気側に吹き返しがあるので吸気側に部署している部隊と連携をとる。

7 濃煙内、夜間、死角等で他の部隊の所在が把握しにくい場所では、自隊の位置を他の部隊に知らせ、ライト・警笛・大声等で相互の位置を確認しあう。

8 床、階段等は、下階からの延焼拡大が速く、また、畳等への注水による重量増加により崩落危険があるので注意する。また、堆積物が多量にある場合などは、突然床が崩落することもあるので、建築物の状態を確認する。

▶ 2階建て木造家屋の1階居室で消火活動の為の堆積物搬出を行っていた際、突然2階床部分が崩落し、その落下物により5名が下敷きになり、内1名が死亡し、3名が負傷した。

▶ 木造2階建て住宅の消火活動中、2階部分の倒壊・下敷きにより4名が亡くなった。

9 家具類、棚及び吊り棚の転倒落下に注意する。

10 進入の際は、高温の消火水に注意する。また、高温のシャッター、壁体、天井等への注水時には、高温の消火水の跳ね返りに注意し、防火帽のシールド、しころ等を活用する。

11 伝導熱、輻射熱等により受熱していることが予測される物体(特に金属製)には注意し、高温が予測、感知できる場合は容易に接触しない。やむを得ず接触する必要がある場合には、注水により十分冷却した後とする。

12 はしごを使用して進入(退避)する際は、はしごを確保するかロープ等で固定する。

▶ 火災現場活動にて、玄関庇部から地上に降下する際に、かぎ付きはしごに足を掛けたところ、はしごが横に滑り、体勢を崩して転落した。

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④ 屋根上での放水

1 屋根上等で放水するときは、すべりや段差、電線その他障害物に注意し、はしご、厚板等で足場を確保し、必要最小限の人員で活動する。

▶ 屋根上で放水中、天窓を踏み抜き、右手で身体を支えようとして、瓦の角で負傷した。

▶ 建物火災に際し、隣家から消火活動に従事中、突然足場のスレート屋根が崩れ、4m落下し脳挫傷により死亡した。

2 ホースラインは棟上で蛇行させるかロープ等で結着し、ホースのズレ防止を図る。

▶ 建物火災において、隣接建物の屋根上から消火活動中に、ホースラインを整理したところ、ホースの反動により誤って火元建物と隣接建物の隙間から転落した。

3 棟上で放水するときは、棟をまたぎ、余裕ホースを十分とり、姿勢を低くし、放水圧力の反動力によりバランスを崩さないよう注意する。

▶ 屋根上で放水中、放水圧力による反動力で身体のバランスを崩し、地上に転落し、負傷した。

4 放水等で濡れている屋根上では、命綱等で身体を確保する。

また、濃煙等により視界が悪い場合も必要に応じた転落措置を講じる。

▶ 濃煙により視界がさえぎられ、出火建物屋根と隣接建物の隙間に転落した。

5 屋根上等で放水するときは、階下の燃焼状況の把握に努めるとともに、他隊の活動状況に注意し、対向放水を避ける。

また、障害物等を投下するときは階下の安全を確認して行う。

▶ 屋根上で放水中、他隊の放水を目に受け負傷した。

6 筒先員と機関員は連絡を密にするとともに、機関員はできるだけ送水圧力を下げ、また見込送水は行わない。

7 周囲の活動隊員は、燃焼状況等を伝達し、注意を喚起する。

8 トタン・スレート屋根上では、はりやさんの上を移動する。なお、塩化ビニールの屋根には登らない。

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⑤ てい上での放水

1 てい上では確実に作業姿勢をとり、命綱等で身体を確保し、転落防止を図る。

▶ てい上で放水中、身体確保が不十分であったため、バランスを崩し、はしごから転落し負傷した。

2 ロープ等を活用してホースまたは筒先を建物等に固定し、ホース圧力による反動力で転落しないよう注意する。

なお、はしごは地盤がよい水平な場所に架ていするとともに必要に応じて固定する。

▶ 壁に架ていして放水中、ホース圧力による反動力で、はしごもろとも転倒し負傷した。

▶ 架ていしていたはしごの上部がずれ、約3mの高さから落ち負傷した。

3 筒先員と機関員は連絡を密にするとともに、機関員はできるだけ送水圧力を下げ、また、見込み送水は行わない。

4 ノズルの開閉は徐々に行い、放水圧力による反動力でバランスを崩さないようにする。

5 はしごの確保やホースの補助を確実に行う。

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⑥ ベランダや屋上等での放水

1 ベランダや屋上で放水するときは、手すり、足元の強度を確認したうえ、必要最小限の人員で活動し、植木鉢等を落下させないよう注意する。

▶ ベランダで放水中、誤って植木鉢を落下させ、地上にいた隊員が負傷した。

2 あらかじめ余裕ホースを十分にとっておき、ロープ等を利用して手すり等にホースを固定する。

3 狭く、手すりの低いベランダや屋上では、強固な柱等に命綱により身体を確保する。

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⑦ 狭い場所での放水

1 組込み部、軒げた等の接続部分は、早期に放水して消火し、これらの落下を防ぐ。

2 延焼部分の真下で活動することは避け、やむを得ず部署するときは、退路を確保して活動する。

3 軒先の下に部署するときは、棒状注水等により窓ガラスや瓦等の落下危険物を先に排除する。

▶ 軒下で放水中、軒げたが落下し、手首に火傷を負った。

4 ノズルの開閉は徐々に行い、放水方向を変える場合は、落下物及び他の隊員に注意しながら行う。

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⑧ 壁体等の倒壊のおそれがある場所での放水

1 モルタル壁に亀裂、ふくらみが生じたときは、倒壊に注意する。

▶ 延焼建物の周囲で放水中、はく離落下してきたモルタル壁が頭部にあたり負傷した。

2 モルタル壁等のはく離、飛散に注意し、防火帽のシールド、しころ等を活用して顔面を保護する。

▶ 木工品製作所の火災において、放水活動中、火勢制圧のため放水位置を前進させた時に、2階部分の外壁(モルタル)に取り付けられていた金属製の看板が落下し、腰部を直撃して負傷した。

3 筒先部署は壁体等の倒壊のおそれのない建物の角に位置し、送水圧力を低くするほか、モルタル壁等の状況を十分に監視する。

4 倒壊が予測される場所等は、ロープ等で標示し、各部隊が進入しないようにする。

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⑨ 相対した位置での放水

1 無線等で合図し、安全を確認したのち、送水圧力を調整して放水する。

2 防火帽のシールド、しころ等を必ず活用し、顔面を保護する。

▶ 濃煙内で放水中、他の小隊の放水を顔面に受け、右眼を負傷した。

3 相対した位置で活動している隊への放水を避けるため、必要時以外は水平放水しない。

▶ 火災現場において、情報収集活動中に放水を受け転倒、負傷した。

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⑩ 足元が水等で見えない位置での放水

1 とび口やつま先等で足元を確認し、足場を確保してから放水する。

▶ 放水位置を移動中、放水により滞水していたくぼみに足をとられ、足首を捻挫した。

2 筒先の移動は、放水を一時停止したのち行うようにする。

3 放水圧力の反動力により体勢を崩すことがないよう注意する。

4 危険箇所はロープ等で明示する。

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(4)車両・火点間の移動 
留意事項 事故事例等
① 道路の横断

1 交通頻繁な道路を横断するときは、監視員を配置するほか、警察官等に交通整理などを要請する。

2 警笛等で合図し、防火帽のシールド、しころ等を上げ視界を確保するとともに、左右の道路の安全を確認したのち横断する。

▶ 伝令活動中、防火帽のしころに視界をさえぎられ周囲をよく確認できなかったため、自動車と接触し、負傷した。

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② 路地、廊下等の移動

1 夜間は照明器具を携行し、狭い場所や暗い場所では明るく照らして、溝の蓋、地物などの障害物や延焼建物からの落下物に注意する。

▶ 伝令のため路地を通過中、溝の蓋を踏み違え、足を負傷した。

2 軒下の障害物や飛び出してくる通行人等との衝突に注意する。

▶ 伝令のため車両へ戻る途中、路地から子供が急に飛び出し、衝突して転倒、ひざを負傷した。

3 架ていされているはしごや、とび口を使用している隊員のそばを通過するときは、十分注意する。

4 路地、廊下の交差部分や曲がり角での移動は、相互に警笛や声を出して合図しながら、衝突しないよう注意する。

5 ホース線を移動する場合は、足元の障害物に留意し、転倒しないよう注意する。

▶ 転戦指示があったため、車両前方に延長されていたホースを道路の端に移動させていたところ、後方にあった古タイヤに足をとられ転倒し、右手を負傷した。

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③ 多数のホースが延長されている場所の移動

1 夜間は照明器具を携行し、狭い場所や暗い場所では明るく照らして、足元を十分確認し、ホースにつまずいたり踏みつけたりしないよう注意する。

▶ 伝令中、ホースを踏み違え、足首を捻挫した。

2 送水されていないホース線の整理を行うときは、送水された場合にホースが蛇行し跳ね上がることがあるので、水流の音やホースの状態に注意する。

▶ 送水されていないホース線を整理中、送水されたため、ホースが跳ね上がり足をとられ、転倒し負傷した。

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④ 塀等を越える移動

1 乗り越えようとする塀等の強度を十分に確認するとともに、塀が高い場合は、はしごを使用する。

2 搬送物品を持ったまま、乗り越えないようにする。

3 塀から降りるときは、足元を確認して、塀にいったんぶら下がってから着地し、直接飛び降りない。

▶ 伝令中、高さ2メートルのコンクリートブロック塀から飛び降り、足首を捻挫した。

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⑤ 夜間の移動

1 照明器具を使用し、地物等の障害物やホース等でつまずかないよう注意する。

▶ 伝令中、足元が暗かったため、入り乱れたホースを踏み違え、足首を捻挫した。

2 照明が十分でないときは、足元や他の障害物に注意しながら移動する。

▶ 伝令中、暗やみで足元に気を取られ、コンクリートブロック塀に顔面を打ちつけ負傷した。

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⑥ 屋根上の移動

1 屋根上の移動は、必要最小限にとどめ、命綱等により身体を確保する。

2 屋根上では重心を低くし、片手または両手を屋根に置き、足元を確認して移動するとともに、すべりや段差、電線その他の障害物に注意する。

▶ 屋根上でホースを保持して移動中、電線に接触し、感電した。

3 屋根裏の燃焼状況や屋根の強度に気をつけ、踏み抜かないよう注意する。

▶ 屋根上でホースを保持して移動中、天窓を踏み抜いて足を負傷した。

4 トタン及びスレート屋根上では、はりやさんの上を移動し、必要に応じてはしごや厚板等で足場を確保する。なお、塩化ビニール製の屋根上には登らない。

▶ 塩化ビニール製波板の下家を移動中、踏み抜いて足を負傷した。

5 瓦屋根の上では瓦を手で保持して移動する。

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⑦ 付近に倒壊や崩壊危険のある場所の移動

1 倒壊や崩壊する危険のある場所の移動は避け、その付近を移動するときは十分注意する。

▶ 屋内で放水のため移動中、壁体が倒壊し頭部にあたり負傷した。

2 倒壊危険のある場所は、ロープ等を張り、隊員を立ち入らせないようにする。

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⑧ 階段の移動

1 足元を十分確認し、階段の踏みはずし、踏み抜きやつまずきに注意して移動する。

▶ 伝令のため階段を移動中、階段で足を踏みはずし、階下へ転落してけい椎を捻挫した。

2 障害物や隊員相互の衝突に注意して移動する。

3 濃煙内等の視界の悪い階段では、手すりを持ち、すり足で慎重に移動する。

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(5)資機材の搬送
留意事項 事故事例等
① はしごの搬送

1 はしごを車両から降ろすときは、止め金に指をはさまれないよう注意し、基底部を先に地上に降ろす。

2 はしごを搬送するときは、はしごのバランスをとって搬送する。

3 はしごを搬送するときは、足元が見にくいため十分に注意し、曲り角や見通しの悪い場所では一旦停止し、通行人や車両等との衝突を避ける。

▶ はしごの搬送中、急ぐあまり曲り角で停止しなかったため、他の隊員と衝突し、負傷させた。

4 はしごを肩から降ろすときは、周囲の安全を確認する。

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② 重量物の搬送

1 重量物の持ち上げや搬送は、複数の隊員で呼吸を合わせて行い、手足がはさまれないよう注意する。

▶ ポータブル排煙機を車両へ積載する時、中腰の不安定な姿勢で持ち上げたため、腰椎を負傷した。

2 重量物を持ち上げるときは、手だけではなく、腰を十分に低くして安定した姿勢で行う。

3 重量物を搬送するときは、バランスを保ち、足元に注意して、転倒しないようにする。

▶ ホース2本を両肩に担いで搬送中、足元の障害物につまずき転倒し、肩を負傷した。

4 重量物の搬送は、必要に応じてホースカー等を利用し、小綱、ロープ等で固定する。

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③ その他の資機材の搬送

1 とび口を搬送するときは、とび先を下に向け他の隊員や通行人にあたらないよう注意する。

2 照明器具やロープを搬送するときは、つまずきや引っかけを防止するため、コードやロープを巻いた状態で行う。

▶ ロープを引きずって搬送したため、後続の隊員がロープを踏みつけ、双方とも転倒して負傷した。

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(6)残火処理
留意事項 事故事例等

1 残火処理時は、疲労等により注意力が散漫になることから、活動各隊を統制して活動にあたる。

2 木造建物等の上下階で作業する場合は、原則として上下で同時に活動しない。

3 燃焼状況によって、建築物がもろくなっている場合があるので、細心の注意をはらう。

▶ 鎮火後の撤去作業中、隣地の住宅と傾いた擁壁との間に挟まれ職員が死亡した。

▶ 残火処理中、火元建物の外壁を破壊するため、外壁の正面でとび口を使用して壁体の一部を引いたところ、突然モルタル壁が崩れ、防火帽にあたり、頸部を負傷した。

▶ 残火処理中、側壁(石膏ボード)が落下して負傷した。

4 瓦等を排除する場合は、活動隊に周知するとともに、一時退避させてから実施する。

▷ 残火処理中、放水し瓦を落としていた時、落ちてきた瓦にあたりそうになった。

5 消火水を含んだ畳等は重量が増加し、床の落下危険が高いため、部屋の中央付近で活動しない。

▷ 残火処理中に隊員2名で建物内へ進入中、水の重み等により2階部分が崩れ落ちて崩落に巻き込まれそうになった。

6 堆積物の上を歩く場合は、釘等による踏み抜きに十分注意する。

7 焼け落ちた電線及び電気コードは感電の恐れがあるので触れないようにする。

8 断熱材に用いられているグラスウール等が火炎で溶融した後、冷えて硬化した場合は、非常に鋭利になるため、防火帽のシールド、しころ等で顔面を保護する。

9 建築材料によっては、石綿(※)を含んだ粉塵吸入する可能性があるので、必要に応じて、防塵マスク等を着用する等の措置を講じること。

※ 参考通知 

「災害現場活動時等における石綿に対する安全対策等の実施について(通知)」(平成17年7月27日消防消第162号)

10 古い家屋の台所廻りや納屋にも井戸があることがあり、焼けた堆積物で判別できないことがあるため、十分留意する。

11 古い家屋などで、広くて長い縁側の上階部分は、崩落するおそれがあるため十分留意する。

12 神社・仏閣などで大広間のある建物では、上階が突然崩落するおそれがあるため十分留意する。

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(7)撤 収 
留意事項 事故事例等
① 共通事項

撤収時は、現場活動後の虚脱感と疲労により注意力が散漫になることがあるので、全ての行動について細心の注意を払う。

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② ホースの撤収(ホースカーを含む。)

1 焼損建物に延長しているホースは、落下物等の危険に注意し、屋外に引き出してから撤収する。

2 階段等狭い場所に延長されているホースは、広い場所まで搬出してから撤収する。また、搬出するときは、はしご等の引き倒しに注意する。

▶ 路地内でホースを撤収中、誤って架ていされていたはしごを引き倒し、倒れたはしごが肩にあたり負傷した。

3 高所に延長しているホースを降下させるときは、必要に応じて身体を確保するとともに、周囲の安全を確認してロープで吊り下げるか金具を先に地上に降ろす。

▶ 高所からホースを撤収中、不用意にホースを落下させたため、金具が地上の隊員の顔面にあたり負傷した。

4 使用後のホースは水を含んで重いので、搬送するときはできるだけ1人1本とする。

▶ 水を含んだ重いホースを撤収中、無理に2本搬送したため、腰部を負傷した。

5 ホースカーで搬送するときは、ホースカーの上に乱雑に積み上げないで、ホースの落下やホースカーが転倒しないように注意する。

▶ ホースカーのホースを撤収中、ホースカーの上に積み上げたホースが崩れ落ち、足を負傷した。

6 ホースカーを車両に積み込むときは、ホースカーがレール等から脱輪しないようにする。また、手をはさまれたりしないよう隊員相互で確認呼唱しながら収納する。

▶ ホースカーを車両に積み込む時、ホースカーがレールから脱輪落下し、そのはずみで身体のバランスを崩し、顔面をホースカーに強打し、負傷した。

7 テールゲートを装備している車両は、ホースカーを所定の位置に固定し、確実にストッパーをかけて、リフター作動時にホースカーが落下転倒しないよう注意する。

▶ ホースカーを車両に積み込む時、ストッパーを確実にかけなかったため、リフターが上昇の際、ホースカーが落下し胸部を打撲した。

8 テールゲートのリフターを作動させるときは、操作員は各隊員の作業状況、周囲の安全を確認してから操作を行い、隊員の手足がテールゲートにはさまれないよう注意する。

▶ リフターを操作する者が他の隊員の作業状況を十分確認しないで作動したため、テールゲートと車体の間に手をはさまれ、負傷した。

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③ ホース以外の資機材の撤収

1 軽量物は手に持ち、重量物はホースカー等を利用して搬送し、必要に応じてロープ等で固定する。

2 ロープやコード等の長いものは、確実に巻き収めてから搬送する。

▶ ポータブル発電機を撤収中、コードリールが足に巻きついて、転倒し負傷した。

3 高所からの撤収は、必要に応じてロープで結着するか、袋に収納後吊り下げて、地上に降ろす。

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④ 夜間の撤収

1 通行車両の状況により交通事故の防止を図るため、監視員を配置し、または警察官等への協力を要請する。

2 撤収が終了するまで、発動発電機による照明で活動範囲を明るく照らすとともに、必要に応じて車両の照明、その他携帯用照明器具を活用し、転倒・衝突等を防止する。

▶ 夜間、路地内でホースを撤収中、曲がり角で出会い頭に他の隊員と衝突し、転倒して双方が負傷した。

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